SITE GRAPHICSー風景写真の変貌

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現代写真の母型2005 サイトグラフィックス[風景写真の変貌]

21世紀、現代日本の写真表現に、注目すべき兆候が生まれつつあります。場所の既成の意味やイメージにとらわれることなく独自の風景を制作する写真家たちの登場です。その現象を、写真表現の先端で活動する10人の写真家たちの最新作によってご覧いただきます。
日本の現代写真の展開のなかで、柴田敏雄や畠山直哉など風景の概念をうちやぶる作家たちが登場したのが90年代前後。日本の新たな風景写真として国際的にも注目されました。その後、90年代末に、野口里佳、横澤典など、風景に対する異質なアプローチが登場してきました。さらに、21世紀に入って、デジタル革命が写真メディアにも深く浸透し、新たな感覚の風景作品が登場してきています。ここでは、その特徴を、「サイト」(特別な意味性やイメージを奪われた場)に関する「グラフィックス」(描写)であると仮に想定して、そこに見えてくる写真表現の可能性と広がりを社会的・美術的なコンテクストも含めて検証する場にしたいと思います。

ところで、「サイト・グラフィックス」という聞きなれない言葉について説明しておきましょう。これは、風景における「場」の新たな側面を指し示そうという造語です。ベルリンの壁崩壊以降の社会状況、そしてデジタルネットワークの進展は、現実において黙示録的な歴史性の概念を解消してしまいました。それによって、歴史性に結びついた「場所」の概念も大きく揺さぶられ、そこに歴史性から脱却した「場所」の概念が生まれてきました。フランスの哲学者、ボードリヤールの言葉をなぞるならば、歴史的な意味をはぎ取られた「中性的で無差別的な」場とさしあたって仮定できるかもしれません。日本の現代の風景表現において静かに、しかし確実に進行しつつある現象は、ここに生まれつつある新たな「場所」の概念と密接に結びついています。こうした新たな場所概念を想い起こさせる写真に対して、手垢のついた「風景写真」(ランド・スケープ)ではなく、中性的な「場」の意味をもつ「サイト」(Site)と「描く」という意味の「グラフィックス」(Graphics)を組み合わせた「サイト・グラフィックス」という言葉を、風景表現の新たな質をより明確にできるのではないかという希望とともに適用してみたいと思います。
写真表現の新たな可能性を、ご高覧ください。

出展作家
片山博文, 北島敬三, 向後兼一, 笹岡啓子, 鈴木良, 塚田守, 津田直,
土屋紳一, 原田晋, 細川文昌

川崎市市民ミュージアム
2005年1月20日(木)~2005年4月10日(日)

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